こんにちは!Tomです。
ふと、ハイライトではない旅に出たくなる。 そんな気分で選んだのが秋田でした。
5月上旬、東京では初夏の陽気なのに、秋田ではまだ桜が咲いていました。 ただ、風は冷たく、肌寒さに思わず身震い。 防寒対策はしっかりしていくことをおすすめします。
想像する秋田は絵のような美しい紅葉、キリっと冷たい空気。 だけど実際に足を運べば、もっと、ずっともっと、人間味のある街でした。
今回は、そんな秋田ですごした旅の記録です。
春の千秋公園で、ババヘラアイスをぱくり
秋田駅に降り立った瞬間、まず心を奪われたのはその駅舎の美しさでした。 木のぬくもりが感じられるあたたかなデザインに、現代的なモダンさが融合していて、まるで美術館のエントランスのよう。
地方の駅にありがちな古びた印象とはまったく異なり、「あれ、ここってこんなに洗練されてるの?」と驚かされました。
そんな空間を抜けて外に出ると、冷たい空気と満開の桜がお出迎え。 駅を出たばかりなのに、もうすでに「来てよかった」と思える空気感。 そのワクワクのまま、最初の目的地である千秋公園へ向かいます。
朝10時すぎ、JR秋田駅に到着。駅を出ると、都会とは違うゆったりとした空気が流れていました。 そして最初に向かったのは、駅から徒歩数分の千秋公園。
公園の入り口にはまだ見頃の桜が咲いていて、ピンクと緑のコントラストが春らしさ満点です。 公園をのんびり歩いていると、名物の「ババヘラアイス」を売るおばあちゃんに遭遇。
ピンクと黄色のバラのように盛られたアイスを見て、思わずにっこり。 一口食べれば、素朴でやさしい甘さが広がります。
のどかな空気のなか、アイス片手にのんびりと公園をめぐる時間。 秋田神社に立ち寄り、旅の無事を祈ってお参り。
木々の間から漏れる光に包まれながら、旅のスイッチがようやく入った気がしました。
無限堂で、地元の味にほっこりランチ
そろそろお腹も空いてきたので、歩いてすぐの『無限堂』へ。
外観は落ち着いた和の雰囲気で、観光客にも地元の方にも親しまれている人気店です。 店内は天井が高くて広々としており、木の温もりと洗練された空間が心地よい空気を作っていました。
この日注文したのは、秋田の郷土料理がちょっとずつ楽しめるランチセット。 その品数の豊富さに思わず声が出そうになります。
ぎばさポン酢、秋田牛すじ煮込み、エビと野菜の天ぷら、ハタハタの切り寿司、いぶりがっこと燻製チーズ、そして主役の稲庭うどん、とんぶりとろろまで。
どれも手の込んだ小鉢ながら、一品ごとにしっかりと存在感があり、それぞれに秋田の土地の味と季節感が感じられました。
なかでも特にお気に入りだったのが「とんぶりとろろ」。 ぷちぷちとした食感と、とろろのまろやかさのコントラストが楽しくて、箸が止まりませんでした。
稲庭うどんは言わずもがな、つるっとしたのどごしとコシの強さが魅力。 つゆのだしもやさしく上品で、最後まで飽きずにいただけました。
ぎばさポン酢は爽やかな磯の香りと酸味で箸休めにぴったり。 牛すじ煮込みはしっかりと煮込まれ、やわらかく、ほんのり甘辛い味つけが心に沁みました。
エビと野菜の天ぷらはサクッと揚がっていて、油っこさは皆無。 いぶりがっこと燻製チーズの組み合わせも絶妙で、まるでお酒が欲しくなるような味わい。
お腹も心もすっかり満たされた昼下がり。 しみじみと「秋田に来てよかったなあ」と感じられる、大満足のランチタイムでした。
ねぶり流し館で、祭り気分を体感
午後は『ねぶり流し館』へ。 ここは秋田の夏祭り「竿燈まつり」などを紹介する体験型ミュージアムです。
入ってすぐ目を引くのは、巨大な竿燈と色とりどりの提灯。 そのスケール感に「おおっ」と声が出ました。
中でも楽しかったのが、大太鼓の打撃体験。 画面に表示されるリズムに合わせて、ドーン、ドーンと叩いていく。
単純なルールなのに、思いのほかムキになってしまって、気づけば少し汗ばんでました。
そして圧巻だったのが、竿燈まつりの実演パフォーマンス。 高さ10メートル近い竿燈を、額や肩、腰にのせて支える妙技。 その一瞬ごとに空気がピンと張り詰め、観客の息づかいまでも静かになるほどの緊張感がありました。
ゆらゆらと風に揺れる提灯の灯りと、それを支える人の体幹の強さ。 まるで生き物のようにしなりながら、絶妙のバランスで立ち続ける竿燈の姿には、心を鷲づかみにされました。
ただのパフォーマンスではなく、土地の誇りと技の伝承を感じさせるひととき。 終わった瞬間には、自然と大きな拍手が巻き起こりました。
見終えたあとも、しばらく余韻が残るほどの迫力でした。
さらに、実際に自分で体験用の小さな竿燈を持たせてもらえるコーナーもありました。 「小さいし、楽勝かな」と思って持ち上げてみると……意外と重い!
支柱のしなり具合や重心の取りづらさに、思わずふらついてしまい、思わず笑ってしまいました。 展示されている竿燈には、幼年用・少年用・青年用・大人用と段階的にサイズが分かれていて、それぞれ重さも高さも異なります。 幼年用でもそれなりにずっしり感じるのに、青年用や大人用ともなれば、支えるだけで一苦労。 祭り本番で自在に操っている様子が、どれほどすごいことなのかが体感として迫ってきました。
この経験を通して、実演で見た技のすごさをよりリアルに実感。 あれを頭の上で支えながら笑顔で演じるなんて、信じられない身体能力と精神力です。
体験してみて初めてわかる、伝統の奥深さに感服しました。
レトロ建築さんぽ、時代を感じる午後
祭りの余韻にひたりながら、次は『旧金子邸』へ。 明治時代の豪商の邸宅で、黒塀と木造の建物がしっとりとした風情を漂わせています。
中に入ると、畳の香りと木の軋む音が迎えてくれて、まるで時間が巻き戻ったかのような感覚に包まれました。 和室や中庭、当時の調度品や書き物などが丁寧に保存・展示されており、館内はとても静か。
ふと耳を澄ますと、かすかに流れてくるのは当時のお客様とのやりとりを再現した音声ガイド。 「いらっしゃいませ」「お品物はこちらでございます」といった声が、遠くから響いてきます。 その音に耳を傾けていると、この家で営まれていた商いの様子が、まるで目の前に浮かび上がってくるようでした。
当時の主人と客との距離感、丁寧なもてなしの心、慎ましくも活気あるやり取り。 建物の中で静かに聞くそれらの声に、いつの間にか想像がふくらみ、時代を超えて心が通ったような気持ちにさえなりました。
目を閉じれば、そこに暮らしていた家族の姿が、ほんのりと浮かんできます。
その後に訪れたのが、『赤れんが郷土館』こと旧秋田銀行本店。
外観は堂々とした赤レンガ造りで、風雪に耐えてきた歴史がそのまま刻まれているような重みを感じさせます。 角を曲がって現れるその姿は、まるで過去からの使者のような存在感がありました。
中では、当時の銀行業務や道具類が丁寧に展示されており、書き込まれた帳簿やレトロな電話機、使い込まれた金庫のハンドルひとつひとつから、明治の人々の営みが静かに語りかけてくるようでした。
この建物が、単なる金融機関ではなく、地域の暮らしや信頼を支える場所だったことが、展示からも強く伝わってきます。 歴史の中で役割を果たしながら、今なおこうして人を迎え入れている姿に、胸が熱くなりました。
ノスタルジーにひたるだけでなく、知らなかった秋田の一面と出会える、そんな場所でした。
駅前で偶然出会ったビアイベントで乾杯!
赤れんが郷土館を出て、少し駅方面へ戻ると、駅前の広場で思いがけないイベントに出くわしました。 なんと地元ブルワリーによるクラフトビールイベントが開催中!
軽快な音楽が流れるなか、屋台がずらりと並び、地元の人や観光客が思い思いにグラスを手に楽しんでいました。
せっかくなので、私も1杯。 選んだのは、秋田のクラフトビールブランド「あくらビール」の柑橘系の香りが爽やかなエール。 冷たいビールが風にさらされた体にしみて、もう最高。
注いでくれたのは、陽気で気さくなお兄さん。 「これはね、ホップがきいてて香りも強くてね、秋田の水で仕込んでるから飲み口がきれいなんですよ」と、熱心に語ってくれました。
そのまま会話が弾み、秋田のクラフトビールの特徴や地元の飲食文化、さらにおすすめの飲み方まで教えてくれるフレンドリーさ。
立ち飲みの輪の中では、他のお客さんとも自然に会話がはずみ、みんなで笑いながらグラスを傾ける時間に。
観光地を巡るのももちろん楽しいけれど、こうして地元の方と交わす何気ないやりとりの中に、旅の本当の醍醐味が詰まっている気がします。
偶然の出会いがもたらす楽しさ。 それこそが、旅の特権ですね。
秋田犬に会えずとも、あたたかなひととき
レトロな街並みを楽しんだ後は、少し足をのばして『秋田犬ステーション』へ。
「わんこたち、元気かな〜」と思いながら訪れると、まさかの「本日はお休みです」の貼り紙。
うーん、これは仕方ない。 ちょっとしょんぼりしたけれど、スタッフさんが気さくに話しかけてくれて、おすすめスポットやお店を教えてくれました。
こういう出会いも旅の宝物です。
秋田長屋居酒屋で、きりたんぽ鍋にほろ酔い
すっかり日も暮れて、秋田の夜ごはんタイム。 向かったのは『秋田長屋酒場』。
まるでタイムスリップしたような古民家風の店内で、「いらっしゃいませ!」の元気な声が迎えてくれます。 囲炉裏のようなカウンター席、天井にぶら下がる昔ながらの道具たち。 店全体がひとつの舞台装置のようで、入った瞬間から旅情がぐっと深まりました。
実は予約をしていなかったのですが、早めの時間に入店したことでなんとか着席。 その後も「予約なし」のお客さんが続々と来店していましたが、「申し訳ありません、今日は満席です」と断られていて、人気の高さがうかがえました。
注文したのは、もちろんきりたんぽ鍋。 比内地鶏のだしがしみたスープ、モチモチと香ばしいきりたんぽ、野菜の甘み……まさに秋田の味。
さらに、比内地鶏の唐揚げは外はカリッと中はふっくら、噛むほどに旨味が広がってビールにもぴったり。 そして忘れちゃいけないのが、つるんとしたのどごしが楽しいじゅんさい。
お酒は、由利政宗と出羽鶴をいただきました。 香りが華やかで、それでいて芯のある味わい。料理との相性も抜群でした。
そして最後にうれしいサプライズが。 会計を済ませたあと、温かいおしぼりと煎餅のお土産を手渡され、「お客様のご多幸をお祈りして——」と、木打ち(きうち)の音で丁寧にお見送りしてもらいました。
旅の終わりに、こんなにもあたたかい締めくくりがあるなんて。 ほろ酔いのまま、にこにこしながらお店をあとにしました。
まとめ:寒さのなかに、あたたかさが残る旅
秋田は、自然と文化、そして人のぬくもりが静かに息づく場所でした。
桜の下で食べたババヘラアイス、大太鼓の振動、夜の居酒屋のあたたかい声。 どれも「旅してよかった」と思わせてくれる風景ばかりです。
気取らず、派手すぎず、それでいて忘れがたい。 そんな旅を探しているなら、5月の秋田はとってもおすすめです。
次は秋田犬に会いたいなあと思いながら、帰路につきました。
それではまた!