3月。春の足音が聞こえてきそうで、まだ冬の名残が色濃く残る季節。ふと気分転換がしたくなり、福島への小さな旅を計画しました。目的は、福島の地酒と郷土料理、そして雪が残る風景に出会うこと。
東京から郡山へ新幹線で向かい、さらに会津若松まで足を伸ばす1泊2日の旅。肩ひじ張らず、でもほんの少しだけ自分を甘やかす。そんな“大人のごほうび旅”が始まります。
昼下がり、東京を出発
1日目:東京→郡山/郡山の夜に酔いしれる
週末の土曜日、少しゆっくりめに起きて、お昼前の東北新幹線に乗車。今夜は“はしご酒”の予定なので、車内では控えめに、小ぶりな駅弁で軽く腹ごしらえ。
東京を出発してしばらくすると、車窓には田園や山並みが広がり始め、枯れた景色の中にも春の気配が混ざっているのを感じます。透き通った青空の下、清らかな空気が心地よい。1時間半ほどで郡山駅に到着。思っていたよりも都会的な雰囲気の駅前に、ちょっと驚きました。
ホテルにチェックイン、郡山の風を感じる
宿は駅から歩いて5分ほどのビジネスホテル。大浴場付きというのが決め手でした。部屋に荷物を置いて一息ついたら、まだ明るいうちから郡山の街を少し散策。3月の福島はまだ冷たい風が吹き、体を縮こまらせながらダウンジャケットの襟を立てます。さて、今夜のメインイベント「酒場めぐり」に出発です。
★旅のワンポイント
3月の郡山は雪が降ることもあります。天気予報のチェックと、防寒対策はしっかりと!
郡山の夜:酒と肴を求めてはしご酒
◯1軒目:「春待堂 郡山店」で地元の味に乾杯
まずは郡山駅から少し歩いたところにある、隠れ家的な居酒屋へ。木のカウンターと落ち着いた照明の店内で、「弥右衛門」「会津中将」「栄川」など、福島を代表する地酒をいただきました。
お通しのピリ辛メンマが予想以上においしくて、すぐに箸が止まらなくなります。
郡山名物の「いか人参」と、地鶏として知られる「川俣シャモ」と「伊達鶏」の串焼きを注文。いか人参のシャキシャキとした食感と甘じょっぱい味付けが地酒によく合い、これぞ東北の酒場、という気分に浸れました。
◯2軒目:日本酒通のスタッフのオススメで日本酒飲み比べ
次に訪れたのは、日本酒の品ぞろえに定評のある「旬膳 くしぜん」。壁一面に並ぶ一升瓶が圧巻で、「泉川」「一歩己」「飛露喜」「写楽」など、福島の名酒が勢揃い。
運よく日本酒好きのスタッフさんがテーブルを担当してくださり、好みを伝えると、「それならこの一本が合うと思いますよ」と丁寧におすすめを教えてくれました。聞けば、自らの日本酒愛が高じてこのお店に就職を決めたのだとか。将来は自分の酒場を持ちたいとの夢も話してくれ、ついつい応援したくなる気持ちになりました。
お腹が空いてきたので、福島のソウルフード「なみえ焼そば」も注文。太麺と濃いソースが相まって、これまたお酒が進みます。酒、料理、そして人との出会いに、心も体もすっかり満たされました。
★旅のワンポイント
福島の食と酒を満喫するなら、地元グルメと地酒の事前リサーチがおすすめです。
ホテルに戻って、湯とビールの余韻
ホテルに戻った後は、まず大浴場へ直行。湯気の立ち上る浴室に身を沈めると、飲み疲れた体がふわっとほぐれていくような感覚に。
湯あがりには、コンビニで買っておいた缶ビールを部屋でのんびりいただきながら、おつまみをちびちび。気づけば、心地よい疲労感に包まれてそのまま眠りに落ちていました。
2日目:郡山→会津若松/雪の城下町で名物ランチを味わう
吹雪の朝、再び旅が始まる
翌朝、外に出ると一面の吹雪。前日とのギャップに驚きつつ、郡山駅へ。会津若松行きのバスは本数が少ないため、時刻表を事前に確認しておくと安心です。
バスの車窓から見えるのは、雪に包まれた田園風景と山々。まさに、この景色を求めて福島までやって来たのだと、静かに心が満たされていきました。
昼前、会津若松に到着。まずは名物を食べ比べ!
お昼近く、会津若松に到着。まずは鶴ヶ城近くの「レストラン二の丸」へ。ここで注文したのは、「会津ソースカツ丼」と「喜多方ラーメン」の両方。
ソースカツ丼は甘めの濃厚ソースとジューシーな豚カツのコンビネーションが絶品で、思わずご飯が進みます。続けて食べた喜多方ラーメンは、あっさりとした醤油スープにちぢれ麺がよく絡み、飲み疲れた体にやさしく染みわたる味でした。
鶴ヶ城で歴史にふれ、雪の城下町を歩く
午後、雪が静かに舞い落ちる中、会津若松の象徴である「鶴ヶ城」へと向かいました。赤瓦の天守閣が雪景色に美しく映え、白と赤のコントラストがまるで絵画のよう。カメラを構えずにはいられない、そんな美しさがそこにはありました。
この城が最も輝いたのは、やはり幕末・戊辰戦争の時代。会津戦争において、鶴ヶ城は1ヶ月にわたる籠城戦に耐え抜いた堅城です。激しい砲撃の中で暮らし、戦い、命を散らしていった人々がいた――そう思うと、今のこの静けさの中にも、彼らの“意志”のようなものが確かに残っているように感じられました。
城内の展示では、白虎隊の記録や当時使われていた武具、残された書簡などをじっくり拝見しました。中でも印象的だったのは、16歳から17歳の若き白虎隊士たちの写真。年齢とは思えない凛々しさと覚悟を感じさせるその表情に、思わず胸が締めつけられました。
天守最上階から見渡した城下の景色は、まるで雪のベールに包まれた時間の止まった世界のよう。彼らもこの場所から、どんな想いで町を見つめていたのだろう――そんなことを自然と想像せずにはいられませんでした。
この場所は、単なる観光名所ではなく、確かに“物語”が生き続けている空間です。雪の中を静かに歩きながら、その歴史と向き合うひとときは、とても貴重な体験となりました。
★旅のワンポイント
日本史と鶴ヶ城の歴史を時系列で確認しておくと、展示内容と照らして見学を楽しめます。
旅の締めくくりは、酒蔵見学で
最後に立ち寄ったのは「末廣酒造」。予約不要で参加できる酒蔵見学にふらりと参加。昔ながらの道具や製法の展示を眺めながら、ガイドの説明を聞くうちに、日本酒造りの奥深さにじわじわと魅了されていきました。
香り豊かな試飲コーナーでは、自分好みの一本に出会うことができ、旅のお土産として購入。旅の最後まで、日本酒とともに楽しむ時間となりました。
★旅のワンポイント
日本酒がどのようなプロセスで製造されるのか、基本の流れを確認しておくとより楽しめます。
郡山に戻り、東京へ帰路
会津若松から再び郡山へ戻るバスの中、今日の雪景色と酒の味を思い返していました。郡山駅で最後に駅ナカのお土産屋をぶらぶらし、18時台の新幹線で東京へ。
旅の終わりは少し寂しい。次は桜の季節、あるいは新緑の頃に来るかもしれません。そう思わせるだけの魅力が、この福島の地にはありました。
おわりに:心と舌を満たす福島の旅
今回の旅で改めて思ったのは、福島には“丁寧に楽しむ旅”が似合うということ。急がず、背伸びせず、でもちょっとだけ贅沢をしてみる。そんな旅のスタイルにぴったりの土地でした。
酒と食、風景と歴史、そして人のぬくもり。短い時間ながら、心も舌もたっぷり満たされる旅でした。
それではまた!
※天候や店舗営業状況は日によって異なる場合がありますので、最新情報をご確認の上での訪問をおすすめします。