こんにちは!Tomです。
前回の秋田編に続いて、今回は週末東北旅の後編・盛岡編をお届けしたいと思います。
秋田のしっとりとした空気とはまた違い、盛岡には凛とした軽やかさがあります。
そして、歩いてまわれるコンパクトさと、そこに詰まった歴史と文化の濃さが心地いい。
そんな盛岡で過ごした、静かで豊かな2日間を綴っていきます。
週末の夜、新幹線に飛び乗り、盛岡駅に到着
週末の夜、新幹線に飛び乗り、夜の盛岡駅に到着しました。
盛岡の駅舎は広々としていて、落ち着いた照明が旅の始まりにちょうど良いテンションをつくってくれます。
5月の駅前の気温は少し肌寒く、夜風が頬をなでていきました。ビルの灯りがやさしく揺れるのを見ながら、気持ちも自然と落ち着いていきます。
ホテルに荷物を置いて、まず向かったのは「麺屋いおり」。駅から徒歩圏内にある、地元で人気のラーメン店です。
外観は控えめですが、店内に入るとカウンター越しに立ちのぼる湯気と、ふわっと漂う煮干しの香りが迎えてくれました。
この日注文したのは、ちぢれ麺の煮干し醤油ラーメン。
見た目はシンプルながら、スープの香りと深みのある味に驚かされます。煮干しの旨みがぎゅっと詰まっていて、それでいて後味はすっきり。
ちぢれ麺はほどよい弾力があり、スープをよく拾ってくれます。食べ進めるほどに「これは地元の人に愛される理由があるな」と納得の味でした。
夜の街の静けさと相まって、心と体をやさしく解いてくれるような一杯でした。
盛岡城跡で、啄木とともに時をさかのぼる
翌朝は早起きして、盛岡城跡公園へ向かいました。
ここは石川啄木が通っていた旧制中学から抜け出して、本を読みふけったと言われる場所でもあります。
現在は石垣だけが残る静かな公園ですが、その広々とした空間はむしろ想像力をかき立てます。
晴れた空の下、公園の高台からは遠く岩手山の雄大な姿がくっきり。空気も澄んでいて、胸いっぱいに吸い込みたくなる気持ちよさでした。
ちなみに、石川啄木は明治時代に活躍した詩人・歌人で、繊細な感性と鋭い社会観察で多くの作品を残しました。短い生涯の中で、家族への愛や郷愁、貧困への苦悩を綴った短歌や詩は、今も多くの人に読み継がれています。
啄木の歌碑も園内にひっそりと佇んでいます。
不来方のお城の草に寝ころびて 空に吸はれし十五の心
まさにこの場所で、当時の啄木少年が空を見上げ、思索にふけっていたのだと思うと、不思議と時間の流れを感じます。
同じように空を見上げながら、「十五の心」にそっと寄り添いたくなる。そんなひとときでした。
昼下がりはクラフトビールとソーセージで乾杯
盛岡駅近くのMOSSビル前では、ちょうどクラフトビールイベントが開催中。
地元のブルワリーが集まり、晴れた空の下で立ち飲みスタイルのビールが楽しめるという最高のシチュエーションでした。
私が選んだのは「MEBUKI」というペールエール。
柑橘系の香りが広がり、キレのある苦味が爽快感を引き立ててくれます。
お供にはジューシーな粗挽きソーセージ。ビールとの相性も抜群で、思わず笑みがこぼれます。
イベント会場には地元の方や観光客が集い、ビール片手に交流を楽しんでいる様子も。
旅先でこうしたイベントに偶然出会えると、「この街に来てよかったな」と心から思えるのです。
名物「福田パン」は中ノ橋店へ
午後は、軽食がてら「福田パン」の中ノ橋店へ足を運びました。
盛岡のご当地グルメとして知られる福田ぱんは、1948年創業の老舗。
ふわふわでモチモチのコッペパンに、注文後その場で具材を塗ってくれるスタイルが特徴です。
中ノ橋店は盛岡城跡から徒歩10分ほど。開運橋を渡って中ノ橋通りをまっすぐ進んだ先にあります。
バスセンターのすぐ隣にあるのですが、実は建物が二つに分かれていて、最初は少し迷ってしまいました。
今回は「チキンミート」をチョイス。ほんのりスパイスの効いた鶏ミンチが、優しいパンの味わいと絶妙にマッチ。
甘い系のパンも人気ですが、しょっぱい系も満足感があります。
店頭ではたくさんの地元客が並び、人気の高さを物語っていました。
食べ歩きのお供にも、宿に持ち帰って夜食にするのもおすすめです。
盛岡八幡宮で旅の無事を祈る
その後に訪れたのは、盛岡市内随一の格式を誇る「盛岡八幡宮」。 延宝8年(1680年)に南部藩主・南部重信によって創建され、以来盛岡の総鎮守として地域の信仰を集めてきた神社です。
鮮やかな朱色の鳥居をくぐると、凛とした空気に包まれ、身が引き締まる思いがします。 本殿は華やかな装飾が施され、木彫りの龍や獅子の意匠に思わず見入ってしまいました。
境内を歩いていると、ちょうど地元の学生たちがおそらく部活動の安全祈願に訪れているであろう場面に出くわしました。 神職の方の祝詞に真剣に耳を傾けている様子が印象的で、「この神社は今も地域に根付いているんだな」と感じました。
私も静かに手を合わせ、この旅の無事と、出会った風景への感謝を祈りました。
啄木・賢治青春館で、二人の原点を辿る
午後は「啄木・賢治青春館」へ。 旧第九十銀行本店を改装したこの建物は、明治時代の洋風建築が今なお美しく残されており、まるで時間が止まったかのような空間です。
館内には、盛岡にゆかりの深い文学者・石川啄木と宮沢賢治の青春時代が丁寧に紹介されています。 啄木は短歌や詩で、個人の感情や社会への眼差しを繊細に描いた文人。宮沢賢治は、自然と人のつながりを宇宙的視点で捉えた詩や童話で知られています。
実はこの二人、盛岡中学校(現・盛岡第一高等学校)の同窓生。啄木は賢治の11年先輩にあたります。直接の交流はありませんでしたが、賢治は啄木の作品やその人生から多くを学び、大きな影響を受けていたと言われています。
啄木は盛岡中学校を中退し、その後東京で詩人・記者として活動。1912年に27歳の若さでこの世を去りました。 一方、賢治は中学校を卒業後、盛岡高等農林学校に進学し、やがて花巻を拠点に文学や教育、農業指導に尽力しました。
展示では、二人の直筆原稿や愛用品、当時の新聞記事などが時系列で並び、彼らの生きた時代と日々の葛藤がリアルに伝わってきます。
啄木の作品には、郷土愛、社会批判、そして恋愛や家族への想いが繊細に描かれており、賢治の作品には、自然への賛美、平和への願い、人と人とのつながりが力強く表現されています。
ちょうど開催されていた「修学旅行展」では、啄木と賢治が学生時代に辿った修学旅行の旅程も展示されていました。 今では1日で巡れる岩手県内の行程も、当時は列車と徒歩を駆使して1週間かけていたとのこと。 移動の苦労や旅への思いが記された日記からは、学ぶことの楽しさや仲間との絆も感じられました。
文学を通じて旅を知り、旅を通じて文学を思う──そんな体験ができる場所でした。
盛楼閣で焼肉と冷麺の贅沢ディナー
日が暮れ始めた頃、駅前の「盛楼閣」へ。盛岡でも指折りの人気焼肉店で、早めの時間に入って正解でした。 食事を終えて出る頃には店の外には行列ができていて、あらためてその人気の高さに驚かされました。
厚切りのカルビを炭火で焼きながら、キリッと冷えたビールで一息。 そして締めには、もちろん盛岡冷麺。
強いコシが特徴のツルツルとした麺、スープは牛骨の旨みに果物の甘さがほんのり混じり、絶妙なバランス。 そして盛岡冷麺らしい特徴として、スイカがトッピングされています。 この甘さが食後の口直しにぴったりで、「冷麺=食事」というより、どこかデザートにも近い余韻がありました。
ボリュームもあって大満足のディナーでした。
2軒目はGin蔵で、東北の酒に酔う
もう少し盛岡の夜を楽しみたくて、2軒目に選んだのは「Gin蔵」。 駅近の隠れ家のような雰囲気で、地酒の品ぞろえが豊富な、しっぽり飲むのにぴったりなお店です。
この夜は、盛岡の「あさ開 水神」、岩泉の「龍泉八重桜」、釜石の「浜千鳥」の3種をいただきました。 どれも個性が際立っていて、それぞれに香り、酸味、口あたりの違いがあり、じっくり味わうことで土地の特徴まで感じられます。
おつまみに頼んだ「奥州いわいどり焼き」は、皮がパリッと香ばしく、中はふっくらジューシー。 シンプルな塩味が地酒の旨味を引き立ててくれます。
お店のスタッフの方に各種日本酒の特徴やオススメを聞きながら、静かにグラスを傾ける。 旅先でのこんな時間も、忘れがたい記憶になります。
瓶ドンの朝食と、お土産で旅のしめくくり
旅の最終日、朝は少し早めに目覚めて、前日に購入しておいた「瓶ドン」で朝ごはん。 帆立やいくらが彩りよく詰められた瓶は見た目も美しく、期待が高まります。
お店の方に聞いた通り、ホテルの冷蔵庫で一晩ゆっくり解凍。朝はコンビニで買ったごはんに瓶の具材をどんっと乗せていただきました。
一口目で広がる磯の香りと海鮮の甘み。 簡単な調理ながら、朝からしっかり「ごちそう」をいただいた気分になりました。
最後に盛岡駅でお土産タイム。 小岩井農場の飲むヨーグルトと、岩泉の牛乳プリンを購入。 どちらも素材の良さが伝わる、素朴でやさしい味です。
まとめ:足取り軽やか、心には深く
盛岡の旅は、にぎやかさよりも静けさ、派手さよりも温かさが際立つものでした。歴史や文学、そして地元の人々の素顔にふれることで、観光以上の深い時間が流れていたように思います。
どの瞬間もやさしく、でも確かに心に残る、そんな2日間でした。次は、雪の季節にも訪れてみたい。そう思いながら、名残惜しくも盛岡をあとにしました。
それではまた!